確定申告電話相談センターに思うこと

今年も昨年同様、東京国税局の確定申告電話相談センターの相談員に従事しました。

実は昨年も現場で課題を感じ、然るべき協議の場において改善の提言を行った経緯があります。
その案は国税局まで届いたと聞きましたが、結局システム上の理由とかで採用には至りませんでした。しかし、意見を投げた責任もあるので今年は昨年より従事日数を増やして臨みました。

今年も「医療費控除」や「年金生活者の確定申告要不要について」の質問は当然多かったのですが、今年は昨年より「住宅ローン控除」や「海外居住者に関連する相談」が目立った記憶があります。

また、昨年同様e-Taxの操作説明に関する問い合わせも去年とほぼ同じくらいありました。しかし、最も時間を取られたのは、今年から東京国税局管内の税務署で導入された「原則事前予約制」の案内です。

「LINEで国税局と『お友達』になっていただいて、そこから予約を取ってください」
「原則LINE予約で、電話予約は枠が少ないと聞いています」

これらの案内に、従事した日数全体でどれほどの時間を費やしたかわかりません。

またこの案内をする中で、「LINE使えない」と話されるお年寄りも多かったです。
全く当たり前の話で、一民間企業であるLINEを納税者全員が使えるわけがありません。
しかしそうは言っても、電話では基本受け付けないと当局が言っていることに反することは言えないので、上で記した「電話予約は枠が少ないと聞いています」という話をもう一度せざるを得ません。更に「お手数ですが再度税務署とお話ししてください」というお願いをして終わります。
一番きつかったのは、亡くなった配偶者の準確定申告をしようとしている、お年寄りからの電話でした。
足が悪く、直接税務署に行くのにも何度も乗り換えが必要。その上、スマホでのLINE予約は出来ず、その予約を手伝ってくれそうな親族の方は遠方。「税務署の方に」と再度お伝えすると、電話口で泣き出されてしまったのです。

電話相談センターにおける本来の税理士の役割は、正しい処理方法や計算方法を伝え、納税者の不安と疑問を解消することにあるはずです。しかし現実は、e-Taxヘルプデスク「に繋げる案内」や税務署や東京国税局での予約「に繋げる案内」に多くの時間が費やされました。

税務当局は業務効率化という旗印の下で、急速なデジタル化を押しすすめています。
税理士法第二条の三には「税理士は、(中略)業務を行うに当たつては、(中略)事務における電磁的方法(中略)の積極的な利用その他の取組を通じて、納税義務者の利便の向上及びその業務の改善進歩を図るよう努めるものとする。」とあります。
この条文はあくまで納税者の利便向上のために書かれているのであって、税務当局の利便向上に資することは求められていません。
また税理士法第一条には「税理士は、税務に関する専門家として、独立した公正な立場において、申告納税制度の理念にそつて、納税義務者の信頼にこたえ、租税に関する法令に規定された納税義務の適正な実現を図ることを使命とする。」とあります。
電話相談センターに電話してこられる納税者は、適正に申告・納税を行おうと考えてかけてこられる方が殆どです。にもかかわらず、税務当局はLINEでの予約を半強制的に行わせて来署を制限し、納税者が正しい申告を行おうとする権利を奪っていると思わざるを得ません。
効率化の名のもとに、納税者の権利が損なわれることはあってはならないと思います。
税務当局には来年の改善を求めたいところです。

※本記事の内容は、筆者個人の実務経験に基づく見解であり、所属する団体の公式見解を示すものではありません。